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これ、一言でいうとどんな小説?
和菓子をモチーフにした、心温まる日常ミステリーの作品だよ。
現実を生きていると、人と比べて自己嫌悪に陥ったり、人の言葉に傷ついたり、色々と大変ですよね。
そんなときは、温かいお茶と甘いお菓子で一休みすると、気持ちが前向きになりませんか?
今回はそんなときにちょうどいい和菓子を題材とした優しいホッとする小説を紹介します。
優しさにあふれる世界に没頭して、日々の疲れを癒してみてはいかがでしょう?
本の概要
2020年に光文社から発行されたシリーズ3作目の作品です。
短編5作とイベントやアンケート特典として書かれた短い話が2話、計7話を楽しめます。
著者は坂木司さんという、2002年に「青空の卵」でデビューされた作家さんです。
本作は1話完結型の話なので、本書から読み始めても全くわからない、ということはありませんよ。
そうはいっても、登場人物の人間関係も含めて楽しみたいという方もいらっしゃいますよね。
そんな方はぜひ1作目から読んでみてくださいね。
オススメする理由
登場人物が身近
この話に出てくる登場人物は完璧ではありません。
他人からしたら十分できているように見えても、本人はどこか苦しい気持ちを持っています。
あなたにも、そう感じるときはありませんか?
人から認められても「ダメだ」と思ったり、人の言葉を悪いように取ってしまって、必要以上に落ち込んだり。
主人公のアンちゃんは、そういった方の代名詞のような存在でしょう。
自己評価が低く、すぐに自分はダメだと思い込む。
アンちゃんは大学にもいかず、デパートの和菓子売り場でアルバイトをしているという状況に、負い目を感じているときもありました。
でも、そこで出会った人たちから、自分が「できない」「改善しないといけない」と思っていたことが、実は強みでもあった、という視点を教えてもらいます。
本書を読んでいると「できなくてもいいんだよ」「あなたのままでいいんだよ」という温かいメッセージが感じられます。
社会で疲れた心にしみわたる、お茶と和菓子でホッとしたときのような気持ちになれる本です。
優しい世界
現実には冷たい人、他人の不幸を喜ぶ人、あなたを攻撃してくる人など、嫌な人もいますよね。
ですが、この作品の中にはそんな人は出てきません。
みんな誰かを思いやり、一生懸命だからこそ感情のコントロールが効かずに傷つけてしまう、
嫌な人が出てきたと思っても、そういった人たちばかりです。
あなたを傷つけてきた現実に存在する人も、もしかしたらそういった人なのかもしれません。
相手を「無理」と切り捨てる前に、そういった観点から見てみたら仲良くなれる可能性もありませんか?
とはいえ、もちろん、現実は優しい人ばかりではありませんから、おかしいと思う人からは逃げてくださいね!
和菓子の知識が広がる
このシリーズは、和菓子について「どうしてこうなっているの?」「なんでこの形なの?」という疑問を解決していくエピソードが満載です。
和菓子は1つ1つが小ぶりながらもお値段がするので、なかなか気軽には食べられませんよね。
特に私は、そのお値段の理由がわからないと、質より量で大きい物を選んでしまいます。
でも、このシリーズを読んでいるとお値段がしても和菓子を食べたくなるんですよね。
なぜなら「この形はこういう意味がある」「この時期のこれを表している」という話が深く知れるから。
他にも、今まで知らなかった和菓子の一面を知ることもできますよ。
ぜひ本書を読んで、和菓子を身近に感じて、1つ買ってみませんか?
小説から飛び出して(感想+α・ネタバレ注意)
作中のお菓子が食べられる!?
期間限定ショップ(終了)
本作の発刊時、2020年11月11日(水)から11月17日(火)にかけて、なんと銀座三越で作品中に出ていた和菓子を販売していました!
オンラインショップもあったので、遠方からもお取り寄せも可能だったようですね。
お値段は1個400円~500円くらいですが、本の世界を体験できるなら、安いものかな?と思ってしまいませんか?
期間限定ショップでしたので、今はありませんが…次作が発売された時には行きたいですね。
他にも、一般的な和菓子も題材に上がっていたので紹介します。
花びら餅
本書の中の「甘い世界」で題材となっていた和菓子です。最近たまに見かけるのではないでしょうか?
その花びら餅に込められた意味が明らかになりますよ!
わらび餅
「透明不透明」で話の中心となる和菓子でしょう。
わらび餅以外にも、くずもちなどの話題も出てきますよ。
一般に出回っているわらび餅は、もともとの「わらび」を使ったものではないようですので、本わらび粉を使ったわらび餅を食べてみたいと思いました。
おせんべい
おせんべいと聞けば、米からできた塩味や醤油味の甘くないものが思い浮かぶでしょう。
しかし、始まりは甘いおやつだったようですよ。しかも小麦粉の。
当たり前にあるお菓子でも、歴史を調べてみるとイメージと違う、なんていうこともあるんですね。
ダイバーシティの観点も含まれる話
今回の作品では、デパートに和菓子を探しに来た外国人のお客様(「甘い世界」)や、
中国から来ている方と仕事をしている方(「かたくなな」)、
LGBTと思われる方の恋愛話(「透明不透明」)など、ダイバーシティを意識されたのか、時代なのか、そういった話もありました。
でも、本当にダイバーシティが進んだら、そのことに主人公が驚いたり、そのことから新しい発見をする、なんてことがなくなるんでしょうね。
早くそんな世界が来てほしいと思いました。
和菓子の日
実は毎年6月16日は和菓子の日なんですって!(「透明不透明」より)
何かイベントでもないのに、1個数百円もする和菓子は買うのに勇気がいるのではないでしょうか?
とはいえ、上生菓子を食べる機会もなかなかないわけですし…
ですから、せっかくならこの日に上生菓子を食べるというのはいかがでしょうか?
先のイベントを考えていると、楽しくてワクワクしませんか?
まとめ
今回は心安らぐ優しい世界を書かれた小説を紹介しました。
疲れた心にしみわたるような優しい世界に癒されますよ。
日本の文化である和菓子に目を向けるきっかけにもなります。
興味を持っていただけたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね。
おまけ:参考図書
シリーズ1作目
基本は変わらず、優しく、そして和菓子のおいしそうな話です。
すでに文庫本でも出ていますから、単行本を買うのは…という方はぜひこちらから読んでみてください。
私がファンになったデビュー作
坂木司さんの作品は、デビュー作当時から優しく、そして登場人物たちが成長していく物語でした。
20年ほど前に読んだ作品なので、細かいことは覚えていませんが…興味があればぜひ手に取ってください!
小説を読んで、色々な人の考え方を知ることは、現実世界での人間関係構築にも役立ちますよね。
現実世界でのコミュニケーションに行き詰ったと感じたら、普段読んだことのないジャンルの小説に手を出してみてはいかがでしょう?
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