※本記事にはアフィリエイト広告を含みます。

母親も父親も娘も、みんなが苦しみを抱えている。湊かなえさんの小説「母性」を読んだ感想

  小説紹介・感想等  
スポンサーリンク

※本記事掲載のリンクにはアフィリエイトリンクが含まれています。

湊かなえさんと言えば「告白」で一躍有名となり、その後の作品も数多く映像化されている有名作家さんですよね。

今回は2022年に映画化もされた「母性」を読んだ感想を書いていきます。

ネタバレもありますので、まだ読んでいない人は注意してください。

概要

2012年に新潮社から出版された、湊かなえさんの書き下ろし作品です。

本作は11作目で、母親と娘の関係に目を向けた長編小説ですね。

湊かなえさんの作品として有名な物は、他には「告白」や「少女」、「Nのために」など多数あり、映像化作品も数多くあります。

本書「母性」も2022年の末に映画化されています。

この本を読んで思ったこと

一番伝えたかったこと

私が本書を読み、著者が最も伝えたかったのはこの一言だと考えています。

おまえのいう母と娘とは、母性を持つ女と持たない女、ってことなんだな。

湊かなえ.母性.新潮社,2012,217

この一言に込めた思いを伝えるために、この本を書かれたのではないか、とさえ思いました。

本書が執筆された2012年では、母親が「子育ては苦しい」と大声で言えるような時代ではなかったのではないでしょうか?

「子供を産んだら立派な母親になれる」という考えのもと、子育ての苦しさを発言できなかった時代だったのではないかな、と考えています。

2023年の今でも、言いづらい環境は多々あるでしょう。

そんな時に「母だからといって子育てができるわけではないよ」というメッセージを発信してくれたのかな、と個人的に考えています。

母親の苦しみ

本書の母親は、ずっと誰かに認めてもらうことを望んでいました。そして人一倍頑張っていました。

現実には頑張っても報われないこともありますし、他人は思い通りには動いてくれませんよね。

私はそっと「嫌われる勇気」を渡してあげたいとも考えましたが、この母親には劇薬すぎるかな、とも悩みました。

もしこんな母親が近くにいたら、私はどう接するのだろうか、距離を取るのか助けようとするのか、悩みながら読み、結局答えは見つかりませんでした。

それでも、最後は母親の「認めてほしい」という願いもある程度叶ったようで、良かったなぁ、と読了感はよかったです。

娘の苦しみ

娘は母性を持った女性だったのだろう、と考えています。

幼心に「母親を守らなきゃ」と孤軍奮闘しますが、その思いは母親にすら気づいてもらえません。

ただ、母親の望みは「認めてもらうこと」だったので、母親のおかれている環境を変えようと頑張るよりも、たった一言「ありがとう」と笑顔で伝えていたら、母娘の関係は変わったのかな、とも考えました。

報われずとも、何年も文句も言うことなく母親のために行動する娘の姿は、心に訴えるものがありました。

父親の苦しみ

本書の多くは母親の手記と娘の回想で成り立っています。

父親に焦点が当たったのは数ページでしょう。それも娘の視点を通して。

しかし、それでも父親も苦しんでいたのだな、ということは伝わってきました。

もしかしたら、一番苦しんでいたのかもしれない、とも思いました。

火事のときに、絵を優先したばっかりに、自分や自分の家族が大切にしている人を死なせたのですから。

私だったら悔やんでも悔やみきれないので、逃げてしまう心もわからなくもないな、と思いました。

言わなければ伝わらない

本書を通して「伝えることの大切さ」も改めて感じました。

娘や父親が、母親に「ありがとう」と伝えていれば、母親はこんなに苦しむこともなかったのでしょう。

父親は「母さんは知っているだろう」と考えていたようですが、これは夫婦の中を悪くさせる典型的な考え方の差ですね。

父親には「夫のトリセツ」を読んで、妻がどういう点で苦しむのか、「妻のトリセツ」を読んでどういう対応をしたらいいのか、学んでほしいと思いました。

とても頭のいい方のようですからね。知れば変われるでしょう。

そして父親の苦しみも、隠すから余計苦しくなるのではないか、と思いました。

ただ、これは言っても受け入れてもらえるかが難しいので、どう行動したらいいのか悩みます。

これは小説ですが、小説を読んでいるときに対応を悩むことで、実際に現実で類似の状況になったときに、マシな対応ができるかな、と考えています

叙述トリックによる味

叙述トリックというほどのものかはわかりませんが、見事に時間軸の差に惑わされました。

ですが、そのトリックのおかげで、手記や回想に出てきた人たちが今どうしているか、というところまで物語に織り込まれていました。

気づいたときには唸ってしまいましたね。

これも湊かなえさんの作品の醍醐味の一つでしょう。

まとめ

映画化もされた湊かなえさんの作品を読んだ感想を紹介しました。

誰も悪意を持っているわけではないのに、ちぐはぐになって苦しみ合う家族を見ていると、とても苦しい気持ちになりました

お互いがお互いを大切に思っているのだから、何かが変われば好転しそうなのに、もどかしい気持ちにもなりました。

実際に人間関係で苦しむ場合、このようなボタンの掛け違いから生まれる苦しみが多いのではないでしょうか?

事態を好転させるきっかけにするためには何をしたらいいのだろうか、常に考えさせられる本でしたよ。

参考

子育てにより幸福度が下がる

先日、このような記事も見ました。

「母性があるから子育ては女性ができる」という考え方のために苦しんでいる女性は多いのでしょう。

子育てに苦しみすぎないでくださいね。

日本の女性は「子育て」で幸福度が低下し「孫育て」でさらに幸福度が下がる…少子化対策が効かない真の理由 (PRESIDENT)

嫌われる勇気

一言で言えば「自分の足で立つための本」でしょう。

他者からの承認を求めず、他者に期待せず、ただありのままを受け入れる、そんな考え方だと思っています。

現状に悩む青年が、アドラー心理学を極めた人と対話し、アドラー心理学を学んでいくというものです。

アドラー心理学は学んでから体得するまでに、今までの人生の半分の長さが必要(40歳であれば、体得までに20年かかる)ということのため、早いうちに学べた人はラッキーですね。

しかし、今が一番若いときですから、気になったらできる限り早く学んでみるといいでしょう。

夫のトリセツ・妻のトリセツ

本書で取り上げられる母親の姿は、私が「妻のトリセツ」で見た女性像とは違っていると感じています。

また「夫のトリセツ」は夫ではなく妻向けに書かれた本です。

しかし、両方とも男性が女性と、もしくは女性が男性と意思疎通を図るにあたり知っておくといいことも書かれています。

場合によっては、男性が男性と、女性が女性と意思疎通を図るときにも参考になるかもしれません。

ですからコミュニケーションのエラーをなくすために、一読の価値はあるでしょう。

ただし、この本だけを鵜呑みにして、実際に目の前にいる人を見ない対応はNGですよ。

今回の話では夫が妻を大切に思っていますし、妻は誰かから承認してもらいたいだけで、夫にどうしてほしいというほどの気持ちはないと思いましたので、夫側が学べば事足りるかな、と思いました。

コメント

  1. 神崎和幸 より:

    こんばんは。

    自分も「母性」読みましたよ。
    心理描写がすごいから最後まで引き込まれました。
    湊さんは女性の心理を描くのが上手だと思いましたよ。

    もどかしい気持ちになられたお気持ちわかります。

    • kate_999 より:

      こんばんは。
      コメントありがとうございます^ ^

      引き込まれてしまいますよね!
      こんな作品を書いてくださった湊かなえさんに感謝です♪

タイトルとURLをコピーしました