※本記事掲載のリンクにはアフィリエイトリンクが含まれています。
あなたは作家になりたいと思ったことはありますか?
あるとしたら、その理由はなんでしょうか?
小説が好きだから、自分も書いてみたい?印税をもらって働かずにお金が欲しい?
もしも動機がお金で作家を目指すのであれば、やめた方がいいでしょう。作家の世界は甘くありません。
今回は、小説家として10年ほどキャリアを積まれている3人の作家さんが語る、作家生活の本を紹介しますね。
本の概要
本書は3人の作家さん、中山七里さん、知念実希人さん、葉真中顕さんが10個のテーマについて語ってくれます。
テーマは新人賞、おカネ、映像化、執筆スタイル、編集者、インプット、SNS、戦略、文学賞、営業です。
3人×10テーマで、30個の体験談を踏まえたお話が読めますよ。
どの話も赤裸々に書かれているので、作家を目指す人はもちろん、作家という人について詳しく知りたい人にも楽しめる内容となっています。
この本で学んだこと
作家は儲からない
作家と聞くと「本が売れたら印税が入ってくるから、働かなくてもお金が稼げる」なんてイメージはありませんか?
しかも、ドラマ化や映画化をしたら、がっぽがっぽ入ってくるイメージ。そんなイメージが私にもありました。
でも、現実は全然違います。全然儲かりません。
例えば、ある作品を単行本(定価1600円、1万部)で出してもらい、その後文庫本(定価700円、3万部)で出してもらったとします。
従来の王道パターンですが、これで得られるお金は約300万円程度です。
単行本が売れないと思われたら文庫本書下ろしで出版となりますが、この場合は初版1万部程度で得られるお金は約60万となります。
単行本を出してもらえる作家さんなら毎年2作品、文庫本のみなら毎年8作品程度でやっとサラリーマン平均くらいでしょうか。
もちろん重版されればもっともらえますし、映像化されれば100万円くらい追加でもらえますが…
その一方で売れなければ次の作品が出してもらえるかもわかりません。
新人賞を受賞した作家さんでも、5年後まで生き残れるのは0~1人の世界です。
あなたが好きになった作家さんも、いつの間にか新刊が出なくなった、という経験があるのではないでしょうか。
これでも作家さんが「印税で悠々自適な生活」を送られていると思えますか?
作家に一番重要な能力
5年後に残っている人がほとんどいないこの業界で生き残る方法、それはひたすら書くことでしょう。
中山七里さんはデビュー10周年の年は1年で単行本12冊、文庫本7冊、計19冊を書き上げる体力の持ち主です。
ここまでではないものの、新人賞受賞後から執筆ペースが速かったために声をかけられる機会が多く、作家業を軌道に乗せられたようです。
知念実希人さんも、新人の頃は文章力(文体)に悩んでいたそうです。では、オンリーワンの文体をどう身に着けたか?
ひたすら書きました。原稿用紙1万枚分を超えたあたりから、自分の強みを生かせる文章になったそうです。
葉真中顕さんは、デビュー後、2作目がなかなか書きあげられなかったそうです。
でも、書くのをやめたわけではありません。1年半の間、おそらく原稿用紙1000枚以上書きながら悩みました。
その結果、やっと2作目が完成しました。
辛いとき、迷ったとき、不安になったとき、作家がすべきことはひたすら書きながら試行錯誤することでしょう。
作家さんたちがそうやって心血を注いで書いてくれた小説を読める私たちは、幸せ者ですね。
一方、小説を書く側に回りたい場合は、これだけ書き続けられるか、ぜひ考えてみてください。
ライトノベルと一般文芸は異なる
小説には大きく、東野圭吾さんの作品のような一般文芸と、転生物で最近話題のライトノベルがあります。
あなたが書きたい小説はどちらでしょうか?中山七里さんは次のようにおっしゃっています。
ライトノベルから一般文芸への進出を目論んだものの、同じ手法を展開してものの見事に失敗した例を、僕はずいぶん見聞きしている。その逆パターンもまた然りで、一般文芸からライトノベルへ転向しようとした作家さんで成功した例を寡聞にして知らない。
(本書, p.185)
つまりあなたが小説家を目指すのであれば、どちらの小説家になりたいか考えてからの方がいいでしょうね。
しかしこれは、作家を目指している状況では朗報ではないでしょうか?
もし一般文芸の賞で受賞できなくても、ライトノベルの賞なら受賞できるかもしれませんよね。
両者はルールやテクニックが違うので、もう一方はあなたの強みと合うかもしれません。
これから目指す人にとっては可能性が広がった、ととらえられるのではないでしょうか。
様々な知識が必要
作家さんに求められる知識は、文章能力だけではありません。
例えば東野圭吾さんのガリレオシリーズでは、物理学の知識がふんだんに盛り込まれていますよね。
知念実希人さんは内科医でもありますから、その知識を使って看板シリーズ「天久鷹央シリーズ」を書かれています。
このように考えてみますと、作家になるには「文章力×○○」という強みが必要そうですね。
とはいえ、知識に勝るものとして経験があります。
生きている以上何かしらの経験はあるでしょうから、文章力を学べば小説はかけそうですね!
失うもの
作家さんは、常に読者が面白いと思うものを提供し続けないと、廃業に追い込まれます。
ですが、読者が面白いと思うものはどうやって判断するのでしょうか?
それは何事においても「どうして面白いと感じるのか」「どうしてつまらないのか」と考え続けることです。
こうなってくると、小説を読んでも映画を見ても、純粋にストーリーを楽しめなくなるかもしれません。
創作物を楽しむ側でいたいのであれば、作家などは目指すべきではないかもしれませんね。
出版社を使わず本を出す
このように、作家を職業とするのは大変かもしれません。
ですが、創作をしたいというだけであれば、出版社からデビューする以外にもやり方はあります。
本書では述べられていませんが、現代にはKDP(kindle出版)というものもあります。
noteに小説を投稿して、読んでもらうのもいいかもしれませんね。
あなたは創作をしてみたいのか、作家として食べていきたいのか、ぜひ考えてみてください。
予想外の出会い
本を読むと、その本の主軸のテーマとして関係ないところで面白いものが見つかりますよね。
私の今回の発見は「米澤穂信さんのTwitter」でした。中山七里さんがこう言っています。
編集者が口を揃えて絶賛するのは米澤穂信さんのTwitterである。ご本人プロフィールに『実のある話はしないことにしています』とあるように、見事に実がない。それなのにとても面白い。
(本書、p.157)
こういわれてしまうと、気になりますよね。
読書中でしたが、いったん止めてTwitterを見に行きました。そして…フォローしました(笑)
作家さんの現実を知るために読んだ本で、まさか面白いTwitterアカウントを見つけるなんて。
ちょっとしたことでしたが、とてもうれしいおまけでした。
まとめ
今回は作家として10年ほどのキャリアを持つ方々のリアルな話を聞ける本を紹介しました。
「簡単に稼げる仕事」というのはないものですね。
しかし、向いているがゆえに苦労を感じにくい仕事はあるでしょう。
あなたが作家に興味を持ち、彼らが話していることがあなたにとって苦労でないのであれば、
作家を目指してみるのもいいかもしれませんね。
おまけ: 著者たちの著作紹介
著者のお名前だけだとわからないかもしれませんので、代表作をアフィリエイトリンクで貼っておきますね。
「この人だったのか!」という発見があるかもしれません。
中山 七里(なかやま しちり)さんの作品
贖罪の奏鳴曲(ソナタ)[本/雑誌] (講談社文庫) (文庫) / 中山七里/〔著〕
ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人 (角川文庫) [ 中山 七里 ]
ほか多数
知念 実希人(ちねん みきと)さんの作品
天久鷹央の推理カルテ (新潮文庫nex(ネックス) 新潮文庫) [ 知念 実希人 ]
文庫 崩れる脳を抱きしめて (実業之日本社文庫) [ 知念 実希人 ]
ほか多数
葉真中 顕(はまなか あき)さんの作品
ほか多数
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