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もっと稼ぎたいから、中小企業診断士になろうと思うんだけど、どうかな?
中小企業診断士がどうやって仕事をして稼いでいるか知っている?
試験も簡単ではないし、まずは仕事ぶりを学んでからにしたら?
キャリアアップのための資格としてよく耳にするものの一つに「中小企業診断士」があるでしょう。
しかし、本当にこの資格を取得したら稼げるようになるのでしょうか?
中小企業診断士の資格は取得するのも大変ですし、せっかく取得するのであれば、具体的に成功のイメージが欲しいですよね。
本書は実際に中小企業診断士として2011年から活動されている著者の経験や、周囲の人たちの話を含めた、中小企業診断士のリアルを教えてくれる本ですよ。
概要
本書は2020年に秀和システムさんから発行された本です。
著者は合同会社ファインスコープの代表をされている、西條由貴男さんです。
著者は1969年に生まれ、2011年に中小企業診断士として独立をされ、現在まで中小企業診断士として活動されています。
つまり独立は42歳ごろのことですね。
本書を読んで、中小企業診断士として稼げそうであれば、著者のように第2のキャリアとして歩むのもありなのかもしれません。
この本から学んだこと
中小企業診断士になるまで
中小企業診断士になる流れは次の4段階になります。
マークシート方式の1次試験に合格
筆記の2次試験に合格
面談方式の口述試験(※これも2次試験の一部ですが、区別されることが多いそうです)に合格
試験に合格したのち、診断士登録をするために必要な実務補習の受講
各々の試験をもう少し詳しくみていきます。
1次試験
1次試験は7科目を2日間に分けて行います。
各科目の試験時間が60分~90分で、試験時間だけで1日目は6時間、2日目は6時間半の長丁場です。
これだけの時間、集中力を維持するのも大変そうですね。
合格ラインは、各科目40点以上、かつ合計420点以上、となります。
全体的に6割でいいと考えると、少し気は楽でしょうか?
2次試験(筆記試験)
2次試験は4科目各80分の筆記試験です。上位数百名が合格する選抜試験とも言われています。
この試験は記述問題であり、公式の解答発表もありませんから、講師や仲間と解答を模索して考えるしか対策方法がありません。
加えて、1次試験に合格した場合に受験しますが、1次試験と2次試験の間は11週間程度です。
1次試験後から勉強を始めていては、十分な準備が整わなそうなところも、試験を難しくする要因と考えられます。
口述試験
これは最低限のコミュニケーション能力を見るもののようで、ほとんど不合格者はいないそうです。
毎年2人くらい。逆にこの2人になってしまうと、心に大きなダメージを負いそうなので、最低限の対策はしたいですがね。
実務補習
中小企業診断士試験に合格したのち、3年以内に実務補習を15日以上受けなければいけません。
この実務補習は平日に開催されるものもありますから、有給休暇を使って参加する必要も出てくるでしょう。
この実務補習を受けられることも確認したうえで試験を受験しないと、せっかく受かっても中小企業診断士になれませんので、注意してくださいね。
更新は5年毎
なお、一度資格を取ったら終わり、ではありません。5年に1回の頻度で更新する必要があります。
この更新要件に「知識の補充」(※研修を受ければOK)と「実務の従事」(※お金はかかりますが研修のようなものを受けてもOKです)が必要となります。
更新をしない場合は休止して15年間までは過ごすことができるそうです。この間に再度条件を満たせば復活できます。
取ったら終わり、でない点には注意してくださいね。
試験のための勉強時間
合格者の多くは年間600~800時間勉強し、合格まで2~3年かかっています。
この勉強時間は、365日で割ると1日あたり1.6時間~2.2時間程度となります。
仕事から帰ってきて、2時間程度の勉強、土日も2時間程度の勉強を2、3年続ける覚悟はありますか?
平日は時間の確保が厳しく、休日のみ勉強する場合、年間休日を120日と考えれば、1日あたり5時間~6.6時間の勉強が必要となります。
この場合、平日は仕事、休日は資格勉強で終わってしまいそうですね。
これだけの時間を勉強に割く覚悟がない場合、中小企業診断士になることを志すと苦しむことになるかもしれません。
資格取得後にかかる費用
中小企業診断士は、人脈によって仕事をもらうことも多々あるそうです。
著者は、経営危機に陥ったときに助けてくれたのは、同期の中小企業診断士だったと書いています。
他にも困難に立ち向かうときに別の視点を与えてくれたのも、やはり中小企業診断士の仲間だったそうです。
ですから、受験勉強時代はスクールに通うことをオススメされていますし、中小企業診断士となった後には中小企業診断協会への入会を薦めています。
入会は任意ですが、入会する場合は入会金と年会費がかかります。
例えば東京都中小企業診断士協会に入会する場合は、入会金として3万円、年会費として5万円かかります。
各都道府県ごとにあるようですので、あなたのお住まいや仕事をしたいと思う地域の協会の金額を調べて、具体的にイメージしてみてくださいね。
なお、他の士業に関しても似たような協会があるみたいですので、資格取得前に確認してみるといいかもしれませんね。
あふれる中小企業診断士
現在、特に東京近郊では診断士余りが起きているようです。
著者が診断士になったころは、公的機関業務は「手を挙げれば誰でもできた」と言われるほど不人気だったそうですが、現在は倍率50倍以上だそうです。
キャリアアップとして中小企業診断士を取得しようとしている人は増えているようですが、中小企業の数はどうでしょうか?
著者が調べた結果は次のようになっています。
2009年の東京都の中小企業数は48万7673社(※1)に対し、2016年には41万3480社(※2)と約15%減っている。おそらく現在はさらに減っていると想定される。
西條由貴男, 中小企業診断士の「お仕事」と「正体」がよ~くわかる本[第2版], 秀和システム, 2020, 162-163
※1 出典:「産業・雇用就業統計基本データ集ー総務省「経済センサスー基礎調査」を東京都産業労働局で再編加工」
※2 出典:「総務省・経済産業省「平成28年経済センサスー活動調査結果」
中小企業診断士は増えて、中小企業が減っていくとなると、一人当たりの仕事は減りそうですよね。
その場合、経験豊富な人の方が仕事を得やすいのかな?とも思います。
もし中小企業診断士として独立して食べていきたいと考えられているのであれば、この逆境を乗り越える作戦を考えながら行動した方がいいでしょうね。
主な業務内容
中小企業診断士の主な仕事は次の3つです。経営コンサルティング、講師、執筆。
ただ、メインとして経営コンサルティングと講師を行い、補助として執筆業を行うというパターンのようです。
では、それぞれの業務についてみていきましょう。
経営コンサルティング
これは特に細かい説明は不要でしょう。
イメージされる通り、クライアント(企業)に対してコンサルティングを行う仕事です。
ですが、特定の企業と顧問契約を結んでいる中小企業診断士は全体の37%(2016年時点)で、しかも税理士や社会保険労務士などのダブルライセンスの持ち主だそうです。
あなたがすでにそれらの資格を持たれていて、2つ目の資格としてであればこの方向もいいかもしれませんが、中小企業診断士の肩書だけでは難しそうですね。
講師
講師と言っても「セミナー講師」と「研修講師」、「資格受験校講師」のどれかがメインとなります。講演講師となることはあまりないようですね。
大企業の研修講師か、カリスマ中小企業診断士として高額セミナー講師を目指すと、比較的安定するようですよ。
執筆
著作を作る目的は、印税ではなくネームバリューをあげるためです。
印税はそんなに儲かりません。詳しくはこちらの記事を見てください。
これら3つの仕事があなたの性格に合っているなら、中小企業診断士としての仕事は苦にならないかもしれませんね。
独立後の苦労
独立したら自由で快適な生活が待っている、なんてことはありません。会社員とは全く違った難しさがあります。
不安定な生き方
会社員であれば、失業しても失業手当が支払われるでしょう。
他にも、解雇される30日前には伝えてもらえるなど、一寸先は闇といった事態は少ないでしょう。
しかし、独立している場合、いきなり仕事がなくなる可能性があります。
それどころか、仕事をしてもお金を払ってもらえない、なんていう場合に遭遇することもあります。
こういった会社員時代にはなかったリスク、トラブルを解決するスキルが必要となります。
休みは少ない
独立したら自由に勤務時間が選べる、楽になる、と考えていませんか?
残念ながらそんな簡単にはいかないようです。
著者はこちらの本を参考に、1年目は3700時間働いたそうです。
1年が365日ですから、休みなく1日10時間ですね。
こうした働き方を経て、独立して10年以上たった今では、年間60日くらいの休みが取れるようになったそうです。
一般的な会社員の休日は120日程度ですから、休みながら働きたいのであれば、会社員の方がいいでしょう。
一方で著者は「やらされ感がないからか、キツイと思ったことはあまりない」といった趣旨の発言をされています。
好きなことであればいくらでも頑張れる人には向いている働き方かもしれませんね。
お客さんを見つけられない
独立した場合、どのようにお客さんを見つけようと考えていますか?
今まで会社員であれば、会社の名前で信頼してもらえたり、会社の関係で人と会って人脈が広がっていったでしょう。
しかし、独立したら仕事は向こうからは来てくれません。
もしあなたが仕事を依頼するとしたら、どういう点を見ますか?
おそらく「実績がある」とか「友人が助けてもらっていた」ということからでしょう。
これらは一朝一夕に得られる評価ではありませんから、独立する前にどうやってお客さんを見つけるのか、良く考えておくと良さそうですね。
まとめ
給料の上がる資格、として中小企業診断士の名前を聞くことがあるでしょう。
なんとなく勉強が大変というイメージはありましたが、具体的にどれくらいの勉強が必要なのか、どうやって稼いでいるのか、というイメージはありませんでした。
そんな漠然とした中小企業診断士のお仕事を、想像できるほどに細かく説明してくれたのが本書です。
それでも、実際に中小企業診断士として稼ごうと思うと、本書では学べなかった状況になることもあるでしょう。
価値のある資格としてなんとなく中小企業診断士を目指すのではなく、なった後まで見据えて資格を取得すべきか考えたいですね。
参考図書
「独立を考えたら読む本」
著者が独立をする前に読んだ本だそうです。
1997年出版の本ですから、今も通用するかはわかりませんが、著者が独立した2011年時点では有用だったのでしょう。
刊行から10年経っても有用だった、ということを考えると、今読んでもためになりそうだな、と思いました。
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